会社などを設立して事業を開始する際には、社会保険に関する手続きも行わなくてはなりません。まずは、社会保険の種類や適用などの基礎的事項と新規適用届について見てみます。
社会保険の種類
社会保険というと、健康保険と厚生年金保険を思い浮かべることが多いと思います。健康保険・厚生年金保険に介護保険を加えて社会保険(狭義)と言われます。一方で、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険は労働保険と言われますが、社会保険(広義)に加えられることもあります。
一般的には社会保険というと狭義のものを指すことが多いため、ここでは労働保険とは分けて考えていくことにいたします。単に社会保険と表記した場合、狭義の社会保険として話を進めていきます。
社会保険の種別 | 対象範囲 | 保険料 | 窓口・担当 | ||
社会保険 (広義) |
社会保険 (狭義) |
健康保険 | 業務災害・通勤災害以外の事由(業務外)による傷病等 | 事業主と被保険者で折半 | 日本年金機構 全国健康保険協会 健康保険組合 |
介護保険 | 介護 | ||||
厚生年金保険 | 高齢・障害・死亡 | 日本年金機構 | |||
労働保険 | 労災保険 | 業務災害・通勤災害が原因の傷病・障害・死亡 | 事業主 | 労働基準監督署 | |
雇用保険 | 失業・高齢・介護休業・育児休業による収入の減少 | 事業主と被保険者で負担 | ハローワーク |
健康保険と厚生年金の適用手続きは、日本年金機構が窓口になっています。健康保険の給付に関しては、全国健康保険協会が行っています。
社会保険の適用(加入義務)については、法人と個人で要件が違っています。
業態 | 業種 | 従業員数 | 加入義務 |
個人事業 | 農林水産畜産業、飲食業、旅館・宿泊業、クリーニング、理容・美容・銭湯、清掃等サービス業、映画・娯楽業、宗教業 | 人数を問わず | なし |
上記以外の業種(法定16業種) | 5人未満 | なし | |
5人以上 | あり | ||
法人 | 全業種 | 1人以上 (役員のみの場合も含む) |
法人については、役員1人のみであっても全業種において加入義務があります。個人事業でも製造業や小売業などの法定16業種においては、常時使用する従業員数が5人以上の場合は加入義務があります。これらのように、事業主の意思に関係なく法的に加入義務のある事業所を強制適用事業所と言います。
強制適用事業所でない個人事業所も、従業員の2分の1以上が社会保険に加入することに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることで加入できます。この場合、厚生年金保健・健康保険のどちらか一つだけ加入するという選択も可能です。認可を受けた場合は、従業員全員が加入することになり、保険給付や保険料は、適用事業所と同じ扱いになります。
令和4年10月1日以降、法定16業種に「弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律または会計に係る業務を行う事業」が追加されました。よって、常時5人以上の従業員を使用する個人事業の士業事務所なども加入義務が発生することになります。
新規適用の手続き
健康保険・厚生年金保険の加入手続きは、加入要件に該当したときから5日以内に「新規適用届」を提出することによって行わなくてはなりません。提出先は、事業所を管轄する年金事務所になります。提出方法は、窓口・郵送・電子申請のいずれでも可能です。
提出書類や記載例などは、日本年金機構のHPからダウンロード可能です。
主な添付書類は、以下の通りです。
- 法人・・・・登記簿謄本(登記事項証明書)、法人番号指定通知書等の写し
- 個人事業・・事業主の世帯全員の住民票
提出先(窓口)は管轄地域の年金事務所ですが、実際の加入事務処理は都道府県ごとに割り当てられた事務センター・広域事務センターで行われています。約2週間程度で手続きが完了し、適用通知書が送付されます。
電子申請
新規適用の手続きは、e-Govによる電子申請でも可能です。年金事務所に出向いたり、紙の書類を郵送したりしなくても良いので便利です。ただし利用には、GビズIDや電子署名可能な電子証明書(マイナンバーカードなど)が必要になります。
入力イメージは上図の通りで、記載事項は紙の申請書と同様です。必要事項を入力してプレビューすると以下のような申請書が生成されます。
登記簿謄本や法人番号指定通知書などの添付書類もスキャナーで画像やPDFにしたものを添付して提出できます。以前は、事業所所在地の略図や地図データの添付が必要でしたが、現在は必要なくなりました。紙の書式についても、略図を書く欄がなくなっています。
まとめ
以上、社会保険の種類や適応事業所、新規適用届の概要について見てきました。社会保険の適応や加入は、拡大傾向にあり、各種の許認可の取得や更新の条件にもなりつつあります。強制適用事業所に該当するようであれば、きちんと手続きをしなくてはなりません。