経営事項審査

建設業許可を受けた建設業者が、公共工事などに入札するためには一定の要件を満たす必要があります。経営事項審査もその一つで、主に経営の規模や状況、技術的水準、社会性などについて、許可行政庁から審査を受けて点数化してもらうものです。その制度や申請、スケジュール管理などの概要をみていきます。

経営事項審査の概要

経営事項審査(経審)とは、公共性のある工事の元請になろうとする建設業者に必須事項の審査です。公共工事を発注する行政機関などは、競争入札に参加しようとする建設業者についての資格審査を行わなくてはなりません(建設業法第27条の23)。主として、欠格要件に該当しないかどうかなどの前提条件を審査したうえで、客観的事項と主観的事項の審査結果を点数化(総合点数)し、順位付けや格付けをします。
このうち客観的事項の審査が経営事項審査といわれる審査制度であり、「経営状況」と「経営規模等評価」(経営規模、技術的能力その他の客観的事項)を数値化して評価するものです。「経営状況の分析」については、国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関が行っています。

経営事項審査と入札参加資格(画像引用:国土交通省関東地方整備局HPより)

公共工事への入札参加を希望しない建設業者に関しては、必ずしも経審を受ける必要がないといえますが、経審はその建設業者の実績や信頼性を示す側面もあります。また公共工事の発注元以外でも、経審を受けた建設業者でなければ受注できない場合もあるようです。

審査項目

審査項目は、経営規模(X)・経営状況(Y)・技術力(Z)・その他の審査項目(社会性等)(W)の4つで構成され、最終的には総合評定値(P)を算出します。それぞれの要素の概要は、以下の表のようになります。

各評価項目と総合評定値(P)の算出方法等
項目区分 内容の概略 最高点/最低点 比重 審査機関
経営規模等 経営規模 X1 完成工事高(許可業種別) 2,309/397 0.25 許可行政庁
X2 自己資本額
利払前税引前償却前利益
2,280/454 0.15
技術力 Z 技術職員数(許可業種別)
請負完成工事高(許可業種別)
2,441/456 0.25
社会性等 W 技術者や技能労働者の育成・確保
知識や技術・技能向上への取組
国際標準化機構の規格への対応
建設業の営業継続の状況
建設業の経理の状況
建設機械の保有状況
防災活動への貢献
法令順守
研究開発
社会保険等への加入状況
退職金制度の整備
2,109/-1,995※1
(2,073/-1,837)※2
0.15
経営状況 経営状況 Y 負債抵抗力
収益性・効率性
財務健全性
絶対的力量
1,595/0 0.20 登録経営状況分析機関
総合評定値(P) = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W 2,165/-18※1
(2,159/6)※2
※1 R5.1.1申請以降
※2 R5.8.14申請以降

総合評定値(P)

結局のところ経営事項審査とは、客観的事項の全体評価である総合評定値(P)を算出することになります。それは、「経営状況(Y)」と「経営規模等(X・Z・W)」に分けて評価して点数化することであり、これらの各項目にウエイト(重み)をつけて総合点数化したものが、総合評定値(P)ということになります。

経営状況の評価(Yの点数化)は、建設業法の規定に基づき国土交通省の登録を受けた機関(登録経営状況分析機関)が行い、経営規模等の評価(X・Z・Wの点数化)と総合評定値の算出(決定)は建設業許可の行政庁が行います。

経営事項審査の詳細については、こちらの手引き(令和5年1月更新版)が参考になります。

申請方法

経営事項審査は、「経営状況(Y)」と「経営規模等(X・Z・W)」に分かれていますので、双方を別々に受審することになります。総合評定値(P)は、これらの審査結果を得た後に許可行政庁に対して請求します(X・Z・Wと同時申請も可能)。
まず登録経営状況分析機関に対して経営状況(Y)の申請を行い、その結果を受けて、次に許可行政庁に経営規模等(X・Z・W)の申請と総合評定値(P)の請求を行います。順番通りそれぞれに申請書等の必要書類を提出して行わなくてはなりません。

経営事項審査の手順

申請先

経営規模等評価の申請は許可行政庁に対して行いますが、書類の提出先は大臣許可・知事許可によって異なります。大臣許可は本店所在地を管轄する地方整備局長等になり、知事許可は都道府県知事になります。ただし提出窓口は、都道府県によって違いがありますので、自治体のHPなどで確認する必要があります。

スケジュール管理

経営事項審査の申請を行うためには、決算日から起算して考えなくてはなりません。決算日から2カ月以内に申告を行い、同じく4カ月以内に決算変更届を行い、それから経営事項審査の申請を行う必要があります。経審の結果通知が出るまで、申請から概ね1カ月程度かかります。よって、それらの期間を考慮したうえで、決算日から計画的にスケジュール管理する必要があります。

経審の有効期限とスケジュール管理

特に経審取得の2年目以降も公共工事を請負おうとするならば、有効期限の間に空白を作らないようにしなくてはなりません。経審の有効期間は、審査基準日(決算日)から起算して「1年7カ月」です。この有効期限が来る前に経審の結果通知が来るようにするために、決算変更届を提出して経審の申請ができるよう、決算日からスケジュール管理する必要があるのです。

提出書類

経営事項審査の申請には、申請書以外に多くの添付書類が必要になります。必要な添付書類は、おおむね以下のようになります。申請書や記載例などは、国土交通省や各自治体のHPなどからダウンロード可能です。
提出書類一式は、経営事項審査チェックシートを使用して確認します。

申請書等

申請書本体は、以下の通りです。

  1. 経営規模等評価申請書・総合評定値請求書
  2. 工事種類別完成工事高/工事種類別請負完成工事高
  3. 工事種類別完成工事高付表
  4. その他の審査項目(社会性)
  5. 技術職員名簿
  6. 経営状況分析結果通知書(原本)
  7. 審査手数料印紙貼付書
  8. 外国子会社並びに建設業者及び外国子会社についての数値の認定書(原本)
    ※該当する場合のみ

行政書士等による代理申請の場合は、別途、委任状が必要になります。

確認書類(添付書類)

申請書に記載した内容を裏付けるために、以下のような書類が必要です。
状況によって必要な書類が変わるので、確認が必要です。

  1. 法人番号指定通知書または国税庁法人番号サイトで確認した法人番号
  2. 消費税及び地方消費税納税証明書(その1)
  3. 工事経歴書
    • 工事請負書、注文書と注文請書のセット
    • 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  4. 確定申告書等
    • 貸借対照表
      ・2期平均の場合、前期と前々期の確定申告書(消費税含む)
    • 損益計算書
    • 法人税確定申告書
  5. 技術職員の資格証
    • 新規・継続で異なる
    • 国家資格者、技能士等の資格者の資格証の写しなど(新規の場合)
  6. 常勤性・雇用期間の証明(上記5に関するもの)
    • 新規・継続で異なる
    • 健康保険証及び厚生年金にかかる標準報酬の決定を通知する書面など
    • 事業所名が記載された健康保険証・雇用保険被保険者資格取得確認通知書
  7. 労働保険概算・確定保険料申告書の控え・保険料領収済通知書
  8. 健康保険・厚生年金保険の保険料納付領収書
  9. 建退共加入履行証明書
    ・経営事項審査用の加入履行証明書
  10. 中退共加入証明書
  11. 法定外労災保険証書
    ・直近決算日が保険期間に含まれるもの
  12. 企業年金証明書
    ・企業年金を導入している場合
    ・厚生年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金の加入証明書、契約書、協定書など
  13. 建設機械の証明書
    ・売買契約書もしくはリース契約書
    ・リースは経審有効期間の全期間にわたって継続するものであることが必要
  14. 防災協定
    ・国、地方公共団体等との協定書コピー
    ・加入証明書など

この他、CPDやCCUS、ISOの取得状況、公認会計士等の在籍などの状況に応じて添付書類が必要になります。自治体によって書式や添付書類が変わる場合もあるので、確認が必要です。

まとめ

以上、経営事項審査の概要について見てきました。経審は、それを取得すること自体が目的ではなく、あくまでその先にある公共工事の受注などが目的です。そして、それを維持していかなければ公共工事の入札資格も維持することが出来ません。総合評定値(P)の点数も重要ですが、スケジュール管理も同様に重要だといえます。